2015年03月30日

【無印】第三十二回  小説「ゴッゴル物語」【2004-11-30発行】

もう、一昔前の話になるのですね。

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仇花の記憶~ショタやおい雑話~

第三十二回  小説「ゴッゴル物語」
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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
月末の小説配信回。お楽しみ戴ければ幸いです。
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    ゴッゴル物語     XQO

 私、グーグリェンドゥとゴッゴル=デ・ラ=
イオアイの一日と言うのは十中八九の割合で私の
腰痛に拠るうめきで始まる。
 「痛々…もう年だな」
 起き抜けに腰を襲う鈍痛…それが房事に起因する
ものであった事は実の所少ない。大体は横に居る
寝汚い若い友人の余りに健やかな寝相の所為だ。
 この寝相に付き合う根気があったからこそ
ゴッゴルとこうして暮らしていられると思えば、
苦笑いが浮かびこそすれそうそう悪くは無い
定めだと言えるだろう。
 冬がまだ遠い季節で良かった。これが冬ならば
腰の痛みとともにイェスパ風邪に襲われて、
幸せを噛み締める所では無くなっていただろう。
 当のゴッゴルはと言うと、枕を抱きしめて
健やかな寝息を立てている。
 全くもって、無邪気なものだ。

 この一見奇妙だが実に覚え易い名の若い友人は、
祖を遠き東方の島国に求める血筋であり、
『デ・ラ=イオアイ』と言うのは彼の地に
伝わる慣わしから由来するのだという。
 が、その慣わしのあった事は本邦でも知られて
いるのだが、事の次第を細やかに伝える文書は
伝わっていない。伝わっているのは細切れの
木簡竹簡と石版の欠片だけ。紙に書かれた記録は
存在しない。事に拠れば焼き捨てられたのやも知れぬ。
 その知識の断片故に、であろうか。ゴッゴルを
知る者は意味ありげな微笑を以って彼を見つめるので
ある。だが実際の所ゴッゴル自身は誰からも彼の地の
風習の手解きを受けていない。
彼の生活に彼の地の習慣が入り込んでいると言われれば、
それは彼が自然に会得したものであって、血脈から
押し付けられたものではないだろう。恐らくは、そうだ。
 又、彼の名である「ゴッゴル」はこの地の言葉でも
ないし、彼の地の言葉でもない。  
 極々偶にある冗句の様な話であるが、実は誤読の為
この名は生まれたのである。本来なら彼の名は「Gogjour」と
なる筈であった。が、彼の出生書類を受理した役人も
彼に最初の祝福を授ける神官も「j」の文字を「g」と
読み違えたのである。
 故に彼の名は「Goggour」ゴッゴルとなった。
その間違いが彼にとって幸福なのか不幸なのかは
一口には言えない。万人に親しまれる名前であると
言う点ではこれ以上はない幸福であろうが、
その親しまれ易い名前の効果で老若男子に懸想され
続けるのだとしたら、ある面不幸であろう。
 ゴッゴル=デ・ラ=イオアイが老若問わぬ男から
懸想されるのは、青年期を迎えた今に始まった事では
ない。幼少の頃から可愛い少女が傍にいようと
どう言う訳か彼の方に男が自然となびくのだ。
 愛し愛される技術を持つまではその懸想の重みに
潰されそうになっていた彼だが、手ほどきを受けて
その技術を開花させた今ではその重みをかわす術も
身につける事が出来ている。彼自身は幼き者若き者達に
対し手ほどきを行わない。手ほどきを示唆するだけだ。
ゴッゴル自身が手ほどきをしてしまうと、された者が
ゴッゴルに身も心も捧げ尽くし、本当に愛すべき者
愛されるべき者の所へ往けなくなってしまうからだ。

 実際の所、私がゴッゴルに惹かれたのは房事や
その類の所ではなく、また別の所である。
 ゴッゴルの時々演じる失態が余りに微笑ましく、
又目が離せぬからこそこうして盟友としてあり続けて
いるのだ。二人とも房事には些か食傷を覚えている
事もあったし。
 寝台にしても、実は一つの寝台で寝ている訳ではない。
二つの寝台を横に並べてその上で寝ているのだ。
その方が色々と寝る間際に物を拡げるのに便利で
あるから。無論、時に気が向けば房事に至る事もある。
が、そう言う機会は今の所、十日に一回訪れれば多い方だ。
 相手の体を貪って心を確かめていた若き日を思わない
事は無い。ゴッゴルもまだ若者の部類であるから。
が、穏やかに心の繋がりだけで日々を過ごす安穏に、
どうやらすっかり慣れてしまったらしい。

 「おはようございます。グーグリェンドゥ。又…」
 「元気があると言う事は良い事だ。気になさるなお若いの」
 「は、はぁ…」
 こうやって若者の照れた顔を頻繁に観ると言う余禄も、
決して悪いものでは無いだろう。
 そして、今日も一日は始まるのである。
                 (終)

○●○
さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて
戴きます。次号まで、御機嫌宜しゅう。
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仇花の記憶~ショタやおい雑話~
第三十二回 2004.11.30発行
【以下略】
posted by 葡萄瓜XQO at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | バックナンバーより | 更新情報をチェックする
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