『源氏物語』帚木~空蝉の段に於ける光源氏と小君の関係であります。
全く以って無知蒙昧でお恥ずかしいのですが、光源氏(当時17歳)と
小君(当時12歳頃?)の関係が同性愛と言う事で取り沙汰され出した
のは橋本治氏の『窯変 源氏物語』(以下『橋本源氏』)が世に出て
からであると筆者は思い込んでいたのですね。
凡例:以下現代語訳については『(訳者苗字)源氏』と文中於記載。
所が如何して。筆者が無知であるだけで既にそう言う指摘は有った様
です。確認の為に手許の『本朝男色考』(岩田準一:著)を観た所、
第三章「平安時代の男色」第一節「伊勢物語前後」に二人の関係に
ついての指摘がしかと載っておりました。当該記事が雑誌に掲載
されていたのは昭和5年ですね。
実際の所、ある方のBLOGのコメントにて示唆が無ければ、多分この
件については『そう言う事もあるのね』で通り過ぎていたでしょう。
一応源氏物語の粗筋は知ってはいるものの、迷宮に踏み入る勇気が
無かったものですから。
そう。迷宮です。
少なくとも筆者が知る限りでは現代語訳『源氏物語』は6種有った筈
です。與謝野晶子・谷崎潤一郎・円地文子・田辺聖子・瀬戸内寂聴、
そして橋本治の各氏の訳が。
二人の男色関係がクローズアップされたのは橋本源氏文中に於いて
ですが、それはもしかしたら橋本氏が余計に思い入れを以って訳文を
描写したのかも知れません。他の各氏の『源氏』ではあっさりした
描写であると言う可能性もあるのです。また現代語訳を比較するので
あれば当然原典も参照すべきでありましょう。
更に往時何色がどう受け止められていたかを考える事も出来ましょう。
物語中の本の一段余りの事ではありますが。
で、結局の所今筆者の手元には橋本源氏・円地源氏・田辺源氏の
それぞれ一巻目が御座います。そして今とりあえず小君登場の部分に
付箋を貼り終えた所です。あと手元に置くべきは与謝野源氏・谷崎
源氏・瀬戸内源氏と原典ですね。この辺りは図書館で当たるも良し
でありましょう。
ざっと読み比べた所、大筋の部分に相違は無いようです。
ただ、扇情的な関係描写となりますと橋本源氏が頭一つ上の様な
感じは致します。こうなってくると読み比べが実に愉しみです。
示唆を戴きました某ショタ絵師様に深く感謝致します。
詳しき報告は改めまして又後日。
紫式部〔著〕 / 円地 文子訳
新潮社 (1981)
この本は現在お取り扱いできません。
新潮社 (1981)
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